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心筋DNA損傷を指標とした心不全患者の
治療応答性や生命予後の高精度予測法を開発

ー心臓収縮機能の低下した心不全に共通する心筋DNA損傷の重要性の解明ー

発表のポイント

  • 背景にある原因疾患に関係なく、心臓収縮機能が低下した心不全を呈する患者の治療前の心筋DNA損傷の程度を定量評価することで、治療応答性や病状の経過を高精度で予測できることを明らかにしました。
  • 心筋DNA損傷の定量評価による予後予測法の有用性を検証できたほか、多岐に渡る心不全の原因疾患の何れにおいてもDNA損傷は共通して見られる病態であることが示唆されました。
  • 心不全患者の予後予測を可能にするDNA損傷定量評価法の有用性を確認することができ、近年叫ばれている個別化医療・精密医療を心不全臨床において実践する上で大事な基盤的技術になると期待されます。

概要

 東京大学大学院医学系研究科重症心不全治療開発講座の候聡志特任助教、同大学大学院医学系研究科の戴哲皓大学院生(医学博士課程)、同大学大学院医学系研究科先端循環器医科学講座の野村征太郎特任准教授、小室一成特任教授と、奈良県立医科大学附属病院循環器内科の尾上健児講師、奈良県立病院機構奈良県西和医療センターの斎藤能彦総長らによる研究グループは、心不全患者において心筋DNA損傷の程度を調べることにより生命予後の予測が可能となることを明らかにしました。
 本研究では心筋生検組織を用いてDNA損傷の程度を評価する方法を開発し、それにより心不全の原因疾患に関係なく、心臓収縮機能の低下した心不全患者ではDNA損傷の程度に比例して治療応答性や生命予後が悪化することが明らかとなりました。本研究は心不全領域における個別化医療・精密医療の実践に直結するのみならず、DNA損傷が多岐にわたる原因疾患によって生じる心不全の共通した病態であることを示唆しており、今後の心不全研究に役立つことが期待されます。

 心不全患者の~
図1:心不全患者の治療応答性を心筋DNA損傷の評価によって事前予測する手法の開発

 薬物治療が導入される前の拡張型心筋症心不全患者から得られた心筋生検組織に対して、ポリ(ADP-リボース)やγ-H2A.XといったDNA損傷の指標の程度を評価しました。その結果と患者の臨床情報を統合して解析した結果、治療開始前の心臓組織に見られるDNA損傷の程度が治療応答性を予測することが分かりました。

論文情報

雑誌名:Journal of the American College of Cardiology (JACC) : Heart Failure
題 名:Myocardial DNA Damage Predicts Heart Failure Outcome in Various Underlying Diseases
著者名:Zhehao Dai, Toshiyuki Ko, Kanna Fujita, *Seitaro Nomura, Yukari Uemura, Kenji Onoue, Momoko Hamano, Manami Katoh, Shintaro Yamada, Mikako Katagiri, Bo Zhang, Satoshi Hatsuse, Takanobu Yamada, Shunsuke Inoue, Masayuki Kubota, Kosuke Sawami, Tuolisi Heryed, Masamichi Ito, Eisuke Amiya, Masaru Hatano, Norifumi Takeda, Hiroyuki Morita, Yoshihiro Yamanishi, Yoshihiko Saito, *Issei Komuro
DOI: 10.1016/j.jchf.2023.09.027

URL: https://doi.org/10.1016/j.jchf.2023.09.027

 

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