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概要
奈良県立医科大学、発生・再生医学講座の栗本一基教授と池田宏輝助教を中心とする研究グループは、組織切片からレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)を用いて採取した単一の細胞に対して、これまでにない高い感度でトランスクリプトームを定量解析できる手法DRaqL(direct RNA recovery and quenching for LCM)を開発しました。組織切片から採取した単一細胞に対する、DRaqLによるトランスクリプトーム解析の感度は、新鮮な状態で単離した細胞に対する、通常の手法による解析と同程度でした。また、DRaqLはmRNAのエキソン結合部位の定量にも適用できることがわかりました。DRaqLを用いてマウス卵巣における卵胞の成長過程を解析し、卵母細胞の直径からトランスクリプトームを予測するモデルを開発しました。さらに、このモデルから逸脱する細胞が、形態的には成長しているものの遺伝子発現の成熟が遅延していることを発見しました。また、顆粒膜細胞の、卵母細胞との位置関係に相関する遺伝子発現変化も同定しました。卵胞成長過程における単一細胞レベルの遺伝子発現変化を、組織学的な情報に定量的に関係づけた解析は、本研究が世界初になります。本研究は、当大学、京都大学(iPS細胞研究所/ヒト生物学高等研究拠点)、理化学研究所(革新知能統合研究センター)の共同研究により実施されました。本成果は9月18日付けでオンライン科学雑誌「Life Science Alliance」に掲載されました。
発表論文
掲載名:Life Science Alliance (Life Science Alliance LLCが発行するオンライン科学雑誌)
タイトル:High-quality single-cell transcriptomics from ovarian histological sections during folliculogenesis (卵胞形成期の卵巣組織切片からの高品質シングルセル・トランスクリプトーム解析)
著者:Hiroki Ikeda, Shintaro Miyao, So Nagaoka, Tomoya Takashima, Sze-Ming Law, Takuya Yamamoto, and Kazuki Kurimoto
掲載日: 2023年9月18日
巻: vol. 6 no. 11 e202301929
DOI: 10.26508/lsa.202301929
URL: https://www.life-science-alliance.org/content/6/11/e202301929
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