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更新日:2016年5月9日
このたび日本膵・膵島移植研究会という歴史ある学会で、『リプログラミング技術を用いた新たな膵島の臓器再生誘導システムの開発』という演題で、たいへん栄誉ある学会賞をいただきました。私たちはこれまで、ES細胞やiPS細胞を用いて人工腸管を立体臓器として作製する再生医療の研究を国内外に先駆けて行ってきました。今回の研究は、私がハーバード大学医学部に留学中に、iPS細胞を用いずに、既存の膵臓の細胞を用いて特定の細胞にDirectにリプログラムさせようという発想のもと、ハーバード・ステムセル研究所と共同で行ったものです。
現在、糖尿病の治療において、膵島移植は有効な治療法のひとつですが、臓器提供者(ドナー)の不足は深刻な問題で、膵島移植にかわる新たな、膵臓の再生医療が熱望されています。そこで、私たちは、膵島の発生に関与する3つの転写因子(Ngn3、Pdx1、Mafa)を同時に発現させるベクターを開発し、マウスより単離した膵管細胞に遺伝子導入することによりin vitro でβ細胞に分化誘導することに成功しました。さらに、3つの遺伝子を糖尿病マウスの膵臓に直接注射することによりin vivo(膵臓内)でも膵島を誘導することもできました。本研究は、iPS細胞を用いることなく、生体外および生体の臓器内で特定の遺伝子を用いて細胞をリプログラミングするという画期的な臓器再生医療であり、ドナー不足が深刻な膵島移植医療にかわる次世代の糖尿病治療としておおいに期待できるものと考えます。
今回このような研究を発表することができたのも、留学先の指導者であるWier教授夫妻や多くの研究仲間の力添えはもちろんのこと、長年にわたりご指導いただきました中島祥介教授をはじめ、ともに研究に励んできた消化器・総合外科の素晴らしい教室員の先生方のおかげです。また、これまでご指導頂きました学内の先生方、いつも研究をサポートしていただいております総合研究棟ならびに研究推進課の多くの関係者の皆様にも感謝申し上げます。これからも、奈良県立医科大学から世界に向けて、オンリーワンの研究成果を発信できるよう頑張っていきたいと思いますので、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
やまだ たかつぐ |
山田 高嗣 (48歳) 奈良県立医科大学 消化器・総合外科学 講師 |
平成 5 年3月 奈良県立医科大学卒業 同年5月 奈良県立医科大学附属病院 臨床研修医(第一外科) 平成 7 年4月 奈良県立医科大学大学院 医学研究科(外科学 I 専攻) 平成11年3月 同 上 修了 平成11年5月 奈良県立医科大学寄生虫学(現:病原体・感染防御医学)助教 平成14年1月 奈良県立奈良病院 外科医長 平成16年7月 奈良県立医科大学附属病院 消化器・総合外科 医員 平成19年4月 奈良県立医科大学附属病院 消化器・総合外科 助教 平成22年1月 米国ハーバード大学医学部 (ジョスリン糖尿病センター) 博士研究員 平成24年8月 奈良県立医科大学附属病院 消化器・総合外科 講師 (現在に至る) |
平成5年6月 医師免許 平成12年6月 医学博士(奈良県立医科大学大学院) |
日本平滑筋学会若手研究者奨励賞(2002) 日本小腸移植研究会学術奨励賞(2008) 中島佐一学術研究奨励賞(2013) |
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